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2026年度 日本サウナ学会研究奨励賞の結果発表

結果発表
学術大賞
研究課題名
『温浴産業のなかのサウナブーム:公的一次統計による市場構造・淘汰・生き残りの分析』
古谷 淳
奨励賞
研究課題名
『「ととのう」体験を支える地下水から地域の備えへ:銭湯減少に伴う防災資源の喪失リスク』
藤田 勉・蛯原 正貴
研究課題名
『ウィスキング体験はどのように語られるのか』
生野 賢司・竹内 康二
研究課題名
『サウナ浴を含む温冷交代刺激後の気分状態と投擲課題の正確性』
坪井 公佑・大平 雅子
若手研究者特別賞
研究課題名
『整うとは』
藏座 進太郎
*敬称略
審査にあたってのコメント
学術大賞
本研究は、サウナ・温浴市場を産業と経営の視点から分析した、これまで手薄だった切り口からの研究です。
衛生行政報告例や経済センサス、家計調査などの公的一次統計を用い、施設数・支出・収益構造の推移を多様な統計手法で丁寧に検証しました。公的データに基づく高い信頼性と、隙のない論理展開が際立っています。
サウナ風呂の施設数が大きく増える一方で銭湯は減少を続けるという「偏在するブーム」の実像を明らかにし、これまで感覚的に語られてきた「ブーム」「カルチャー」「インフラ」という言葉に、公的統計による裏付けを与えました。サウナ市場は成熟期に入りつつあるのか。その問いに向き合うための確かな土台となる研究です。
また、堀田湯や黄金湯に代表される、サウナを前面に打ち出した「ネオ銭湯」が生まれてきた必然性を、産業構造の側から裏付けた点も高く評価されました。
奨励賞
『「ととのう」体験を支える地下水から地域の備えへ:銭湯減少に伴う防災資源の喪失リスク』
水風呂を支える銭湯の井戸を「使うことによって備える井戸」と捉え直し、文化・社会資本としての銭湯の価値に光を当てた研究です。
公開資料の丹念な整理と照合をもとに、自治体による井戸の把握・登録や、担い手の承継支援といった具体的な提言までまとめ上げている点が高く評価されました。銭湯の減少とともに地域から何が失われるのかを示す、重要な注意喚起でもあります。
銭湯の減少を扱った、学術大賞受賞の古谷氏の研究とも接続する内容であり、今後、井戸や地下水利用の実証が進むことに大いに期待します。
『ウィスキング体験はどのように語られるのか』
前報の研究をさらに掘り下げ、ウィスキング体験と通常のサウナ体験の語られ方を計量テキスト分析で比較した研究です。
比較群の設計や分析手法が精緻で、「生まれ変わる」「再生」といった表現がウィスキング体験に特有に現れることを示すなど、体験を言語化する興味深い結果が得られました。
クラシカルなものからカジュアルなものまで幅のあるウィスキングを、どのように定義して捉えるか。今後の研究の発展に期待します。
『サウナ浴を含む温冷交代刺激後の気分状態と投擲課題の正確性』
対照条件を設けたクロスオーバー試験により、サウナ浴後の気分状態と投擲の正確性を検証した介入研究です。
運動パフォーマンスに対して心理面からアプローチするという視点が新鮮で、結果を誇張せず誠実に考察している点も評価されました。
今後は、筋肉などフィジカル面への影響の切り分け(種目の選び方を含む)、サウナ浴中の温熱負荷の確認、さらに一定の交感神経優位がパフォーマンスに有利に働く可能性を踏まえた投擲タイミングの検討など、さらなる展開が楽しみな研究です。
若手研究者特別賞
『整うとは』
小学生の藏座さんが、自宅のお風呂と冷水シャワー、休憩を組み合わせて3日間の実験を行い、体温や心拍数を記録して「整う」とは何かに挑んだ自由研究です。
安全に配慮して自宅で実験を行ったことや、自分の感じ方と測った数値を結びつけようとした姿勢は、研究の第一歩として高く評価されました。
サウナを愛する若き研究者の未来に期待を込めて、特別に「若手研究者特別賞」を設け、贈ることといたしました。
論文内容について
学術大賞受賞者による記念講演は、2026年11月7日(土)開催 日本サウナ学会総会 2026(於:愛知県豊田市 株式会社タマディック Mobius Park)にて行われます。
また、受賞対象論文は「The Japanese Journal of Sauna 2026」として日本サウナ学会公式サイトに全文掲載予定です。
最後に
本年度は、産業・経済、防災・地域社会、言語、運動パフォーマンスと、これまで以上に幅広い視点からサウナを捉えた研究が数多く寄せられました。学生からの応募もあり、サウナ研究の裾野の広がりを強く実感しています。
サウナを通して、身体を、社会を、そして地域を知る。今後もサウナ研究のさらなる進展を心から期待しています。