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第二回日本サウナ学会研究奨励賞

1,結果発表
学術大賞

『サウナや水風呂の嗜好性は遺伝子で決まるのか?』

〜温度感受性遺伝子の日本・フィンランド間ゲノム比較解析〜

塚崎雅之氏, 石田充輝氏

奨励賞

研究課題名 『地域資源としてのサウナを活用した地域住民との健康づくり活動』

春山顕一氏

研究課題名 『サウナとマインドフルネスはストレスを低減するのか? 』

岡澤 隆佑氏

研究課題名 『テントサウナによる心理的効果 』

阿部允哉氏

 

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2. 審査にあたってのコメント

学術大賞

多人種の健常人の SNP データ(National Human Genome Research Institute, 1000 Genomes project)を用いた GWAS 解析により、日本人とフィンランド人の温度感受性遺伝子のゲ ノム配列を比較した報告である。

フィンランド人は日本人に比べて温度感受性遺伝子の多様性が高い可能性が示唆され、サウナ浴習慣の違い、地理的要因あるいは人類学的要因による遺伝的多様性、など医学的・社会的背景に起因していると考えられた。

加えて、個々人レベルでも温度感受性受容体遺伝子の違いが報告され個々人が最適なサウナ室内あるいは水風呂の温度が異なることが示唆された。昨今のサウナブームによりエスカレートする温度設定に警鐘を鳴らすとともに、より多くの人々がサウナを楽しむためにはサウナにも多様性が必要であり個々人に合った施設を選択することがサウナを安全にかつ快適に楽しむ上で重要であり医学的・社会的重要性から満票による大賞選出となった。

奨励賞

全体として大賞と甲乙付け難い良い研究報告が多く、昨年より一層レベルが上がった印象であった。

大賞選出にあたって最後まで選考に残ったのは春山顕一氏による『地域資源としてのサウナを活用した地域住民との健康づくり活動』。北海道内屈指の豪雪地帯である北海道沼田町は「奇跡の水」として名高い冷泉など地域資源を活用した温浴施設『ほろしん温泉「ほたる館」』のサウナを用いて医学的効能の評価を行った報告である。サウナ浴により認知機能の向上が認められ、体重やBMI、体脂肪率が増加したことが報告された。サウナ浴による恩恵は大きいものの、サウナ後の食事、いわゆる「サウナ飯」特に沼田町特産の雪中米は非常に美味しく、ついつい食べ過ぎてしまうことが注意すべき点である。サウナを通じた地域資源の活用方法に加えて、サウナ浴による健康増進における注意点も喚起しており大変重要な報告であるため選出した。

岡澤 隆佑氏による『サウナとマインドフルネスはストレスを低減するのか?』はサウナとマインドフルネスを組み合わせることによるストレス低減効果を報告したものである。サウナと並んで昨今のトレンドとなっているマインドフルネスであるが、サウナとの相性が良いことはサウナ愛好家であれば体感していることであり、多くの方が知りたいと思っていた内容であるため選出した。

阿部允哉氏による『テントサウナによる心理的効果は?』についての報告は、昨今、急速に流行してきているテントサウナの心理的影響を調べたものである。対象となったサンプル数が少ないものの、新たなサウナの利用方法であるテントサウナについての知見は貴重であるため選出した。

3. 論文内容について

2022年11月26日に開催する日本サウナ学会学術総会2022(於: 北海道ホテル(北海道帯広市))にて学術大賞受賞者による発表を予定している。

学術総会後、受賞対象論文は「The Japanese Journal of Sauna 2022」として日本サウナ学会ホームページに全文掲載する予定である。

最後に
今回も多くの応募が寄せられ、更なるサウナ熱の高まりを感じられる内容でした。

サウナの良い面のみならず注意すべき点あるいは地域資源活用など社会的な意義のあるサウナ研究がますます進ことを望んでいます。